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ショッピングを続ける日本で生産されているい草の9割は熊本県産ってご存じでしたか? 熊本のい草は、織り上げた際の美しい仕上がりが評判で、国内外から高い支持を得ています。
今回訪ねたのは、そんな熊本で代々い草を育て続ける「茣蓙蔵十平」(ござくらじゅうへい)の畑野泰人さん・泰輝さん親子。
い草づくりへのこだわりを聞かせていただくなかで見えてきたのは、先代を敬う温故知新の心。そして、い草で環境と社会に貢献するために新たな挑戦をし続ける、力強い姿でした。
今回お話を伺ったのは……
い草農家
畑野 泰人|はたの やすと
六代目 畑野 十平
1969年生まれ
手掛けるい草は艶と滑らかさが評判で、熊本県い草大会 農林水産省農産局長賞など多くの賞を受賞。
い草農家初の独自ブランド「茣蓙蔵十平」を立ち上げる。
趣味はサッカー観戦
い草農家
畑野 泰輝|はたの たいき
七代目 畑野 十平
1995年生まれ
幼い頃から祖父や父親(泰人さん)が農業に励む姿を見て育ち、自身も同じ道を志す。
趣味は野球観戦
生産しているい草の品種と、い草づくりでのこだわりを教えてください。
畑野 泰人:
「ひのみどり」と「夕凪」を生産しています。こだわりはまず、い草が健康体であること。あとは、つやがあること……かな。端的に言えば。
memo|い草の品種について
ひのみどり:い草の一本一本が細いのに太さが揃っており、色揃いも美しい高品質ない草。非常に繊細で、栽培には高い技術が求められる。熊本県で生産されるい草の約25%はこの品種。
夕凪:緑味が深く良質ない草。硬くて丈夫な仕上がりになる。熊本県で生産されるい草の約15%はこの品種。
畑野さんのい草は織りも丁寧ですよね。
畑野 泰人:
しなやかでなめらか、つるっとした質感ね。これはうちの売り。
その秘訣やこだわりなどはありますか?
畑野 泰人:
あ、そうそう、ちょっとごめん言い忘れた。
い草作りのこだわりでね、これば言わんば(これを言わなければ)。
その、い草を作ることで、環境と社会に貢献したいなっていつも思ってるわけですよ。 なので、肥料も僕は厳選して使うし、微生物も液肥も自分で作る。
刈り取り前のい草(ひのみどり)と培養中の光合成細菌(画像:茣蓙蔵十平 Facebookより)
え、微生物もですか!?
畑野 泰人:
うん。微生物は自家培養、液肥は今仕込み中。
い草は健康体にあるっていうことは、田んぼ自体がちゃんとしとらんと、い草は健康にならんわけ。それは人間と一緒、って考えていて。
例えば、日本人が長生きするのは、発酵食品を食べるわけたい? 体内における善玉菌を増やすことによって、腸内免疫を高めたり、腸内が活発化する。だから日々のパフォーマンスが上がる……。
それは田んぼもい草も一緒で。 田んぼがそれだけ腸内免疫が高くて活性化しとったら、 い草そのものも健康体じゃない?
なるほど、その考えは面白いですね。
畑野さんのい草を栽培している田んぼ(撮影:4月中旬)
畑野さんのご自宅兼ショールーム(畳店向け)。壁にもい草が敷きこまれていました。
畑野 泰人:
でね、そうやって健康体に育ったい草は、必ず織ったときの畳表に出る。いや、畳表に出るじゃなく、部屋に出る。
市場で畳表を買うときは、小さな見本しか見らん(見ない)わけ。でもそれが6畳、8畳に敷き詰められたら……。もう健康体のい草とそうじゃないい草って、一目瞭然。俺、そこに気づいたわけ。ていうか、気づかされたわけ。
「気づかされた」?
畑野 泰人:
「畑野さんの表は、敷くときよりも敷き込んだ後のほうが美しい。何でですかね?」って言われたんだよね。……腕かな?
一同:(笑)
畑野 泰人:
でも、「あ、なるほどなあと。そこなんだな」と気付いた。
畳表の織機。栽培したい草を自ら織り上げています。
い草農家さんは「栽培から織りまで」までを担うところがほとんどのなか、畑野さんはさらに自ら小物を作って販売も行っているという珍しい農家さん。「茣蓙蔵十平(ござくらじゅうへい)」というブランドで活動しているようで……。
「茣蓙蔵十平」というブランド名には、どんな由来があるんですか?
畑野 泰人:
「十平」というのは初代の名前なんだけど、うちの親父もそれを受け継いで十平って名前で。
親父の畳表は「十平表」って評判で、俺もこれを引き継いだんだけど、なんかそれだけじゃしっくりこないなあと。自社ブランドを立ち上げんといかんなって。で、い草農家で初めて、独自ブランド「茣蓙蔵十平」を立ち上げた。
memo|「茣蓙蔵(ござくら)」にはどんな由来が?
畑野さんは収穫したい草を半年寝かせて選別し、さらにその後も倉庫で寝かせています。その管理を昔は蔵で行なっていたため、「茣蓙蔵」と名付けました。この過程が畑野さんのい草に粘りと艶を生み出しています。(参考:茣蓙蔵十平 Facebook)
「十平表」ではなくて、「茣蓙蔵十平」という畳表?
畑野 泰人:
いや、「茣蓙蔵十平」というブランドのなかの一つの商品としての「十平表」かな。車のブランド名と車種、みたいな。
畳表以外にも、い草のアイテムを色々作っているということですね。どんな物を作っているんですか?
畑野 泰人:
こんなね、寝ござとか座布団とか。
国産い草 寝ござ 蔦 (つた)
国産い草 座布団 蔦 (つた)
素敵ですね。作り始めたきっかけとか、そのこだわっているポイントとかはありますか?
畑野 泰輝:
きっかけはそうですね……、より多くの人にいぐさに触れてほしいという気持ちで作りましたね。
近づいてみると、肥後目積の繊細な模様が。い草の香りにほっと癒されます。
ヘリは蔦柄。い草の上でくつろぐひとときを素敵に彩ります。
畑野 泰輝:
こだわっているところは、 特殊な目積「肥後目積(ひごめせき)」の柄物の表を使っているところですかね。
ヘリもちょっといろいろと厳選して使っています。
memo|特殊な目積織〈肥後目積〉とは?
目積(めせき)とは、い草の織り方の一つ。織りが細かく繊細で、柔らかい肌触りが特徴です。
肥後目積はその一種。一般の畳表専用の織機ではなく、台数が少ない希少な特殊柄専用の織機で織られています。
最後にひとつ質問です。何か好きな言葉とかってありますか?
畑野 泰人:
僕はね、「温故知新」。
僕も六代目になるけん、今あるのは、結局先人たちの礎があるわけですよ。
い草業界を取り巻く環境は厳しいけれど、僕らのとこは先代が残してくれた田んぼが沢山あったからこそ、い草だけでなく米も作れて、ギリギリ生き残ってる。
それこそ家の田んぼが少なかったら、もうい草はやめとったかもしれん。
って思えば、先人たちのおかげで、今がある。それしかない。
だから、そこはちゃんとリスペクトして、でもそればっかりじゃやっていけないから、新しい風も吹かせないけん。古きを温め新しきを知る、って感じかな。
畑野 泰人:
玄関に置いとる長持とかも押し入れに眠っとったけん、あれは俺が活かしたらんとって思って、持ってきて飾っとる。
これ凄いですね、歴史を感じる……。
畑野 泰人:
まだほかにもいっぱいあるよ。
まあだから、その礎で今俺たちの田んぼがあるからさ、そこはやっぱちゃんとリスペクトせんと、次につながらんと思う。
「茣蓙蔵十平」の文字は泰人さんご自身が書いたそう。
ありがとうございます。泰輝さんは何か好きな言葉ありますか?
畑野 泰輝:
好きな言葉……、難しいですね。
でもまあ、「ひとつひとつ丁寧に」っていうことですかね。
やっぱり、い草を織るときも1本1本こう、枯れがあったりとか、そういうのを見ていかないといけないので。1本1本が表になるので、そこはやっぱり気にするようにはしていますね。
親子で先刈り(い草の新芽を刈り取ることで、成長を促す作業)をしているところ。(撮影:4月中旬)
泰輝さんの「ひとつひとつ丁寧に」という考え方には、泰人さんの先代を敬い、丁寧に仕事をしていく姿が重なります。い草づくりの精神が、親から子へとしっかりと受け継がれているのを感じました。 本日は貴重なお話をありがとうございました!
など
地域特産物マイスター(いぐさ・畳表)
くまもとグリーン農業 宣言番号/1-03077
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